あまんきみこ 作
酒井こま子 絵
ポプラ社 出版
おすすめ年齢:3~5歳児
■あらすじ■
私と弟のけんちゃんがおやつを食べ終わった時に、
公園に縄跳びを忘れてきたことを思い出しました。
木の枝にかけたまま、帰ってきちゃった。
二人で縄跳びを取りに公園に出かけると、
木の枝には何もかかっていませんでした。
すると、どこからか子ども達の楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
「たあちゃんかみこちゃんかも」
と思いながら声のする方へ向かっていくと、
原っぱで子ぎつねがたくさんで大縄跳びをしていました。
「おおなみ こなみ ぐるっと まわって きつねの め」
と歌いながら10匹が仲良く縄跳びをしていました。
不思議に思って見つめていると…
■レビュー■
物語は終始、『わたし』からの視点で描かれているので、
主人公が何を考え、思って動いているかがよくわかります。
状況説明も、私の感じたことや会話によってされており、
話の内容がスッと入ってきます。
そのため展開も分かりやすく、ついていくことができるでしょう。
縄跳びという遊び道具を公園に忘れていった
という子ども達の身近によくある出来事から、
子ぎつねが縄跳びをしているという、
不思議な場面へと一気に転換しますが、
前述の私視点の文章により、自然と繋がっています。
また、キツネが縄跳びをすることによって、
尻尾がじゃまでひっかかって上手く跳べないので、
主人公が「尻尾を背中にくっつけるようにしたら」
とアドバイスをしてあげたことにより、
一緒に楽しく跳べたことなど、
楽しい展開になっています。
子ぎつねが使っていた縄跳びに「りえ」と自分の名前が書いていて、
主人公は無くなった自分のものだと気が付きますが、
キツネの中に「りえ」ちゃんがいたことで、
縄跳びを譲ってあげたりと、
心温まる内容となっているとともに、
出来事や状況の理由や原因がしっかりと描かれていて、
とてもまとまった印象を受けます。
■読んだ子どもの姿■
きつねが大縄跳びをしているのを見て、
「きつねさんも縄跳び好きなんだね」などと言ったり、
尻尾が引っかかって失敗しているところを見て、
「確かに尻尾があると跳びにくいかも」と
きつねの身になって考える子もいます。
4、5歳児の縄跳びをする年齢の子どもは、
この絵本を読んだ後に縄跳びに意欲を持つこともあったり、
「きつねさんより上手?」などと大人に聞いてきたりします。
キツネの中にも名前が「りえ」な子がいる
ということが年齢が低い子どもには理解しにくいかもしれませんが、
楽しそうな雰囲気の内容に引き込まれて
静かに話を聞いてくれます。
主人公視点で描かれた不思議なお話をぜひ
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