石崎洋司 文
大島妙子 絵
講談社 出版
おすすめ年齢:3~5歳児
■あらすじ■
昔々あるお寺におしょうさんと小僧さんが暮らしていました。
ある日、おしょうさんが小僧さんにお使いを頼みました。
「山にたくさん咲いている花を取ってきてくれんか?」
そう言われてすぐに行こうとした小僧さんに、
おしょうさんが三枚のお札を渡しました。
「あの山には夜になると怖い山姥(やまんば)が出る、
明るいうちに帰ってきなさい。
もし困った事になったらその魔法のお札にお願いするといい」
こうしてお花を摘みに山へ小僧さんは出かけました。
一生懸命に花を摘んでいると、
いつの間にか辺りが暗くなっていき、夜が近づいてきました。
「大変だ、急いでお寺に帰らないと」
しかし山を下りている途中に夜になってしまいました。
どうしようと小僧さんが困っていると、
家の明かりが見えました。
「今日はここに泊めてもらうようにお願いしてみよう」
家の中に声をかけると優しそうなおばあさんが出てきて…
■レビュー■
日本昔話より「さんまいのおふだ」のお話です。
山に行った帰りに山姥に会ってしまうお話なのですが、
小僧さんは、三枚のお札を使って上手く切り抜けてお寺まで逃げ帰ります。
このお話はとてもテンポ良い内容で、
夜になっていると明かりがついている家がある
その家にはおばあさんが住んでいて、ご飯を出してくれてお風呂に入れてくれて
布団まで用意してくれます。
でもそのおばあさんが山姥だったので、
小僧さんは逃げますが、見つかって追いかけられてしまいます。
逃げている最中に3度、お札に助けられます。
子どもは3という数字に親しみを持つため、
絵本を読む中で「次はどうなるんだろう」という気持ちを呼び起こしてくれます。
「さんまいのおふだ」のお話は、絵本によって少しづつ内容が違っています。
山姥が鬼ババアだったり、
二枚目、三枚目のお札で出てくるのが火だったり、
水が出てきても泳ぐのでなく、全て吸い込んでしまったりと、
違いがあるので面白いです。
今回紹介した絵本は、
一枚目のお札→「まだだよ」の返事をしてくれる
二枚目のお札→水がたくさん出てくる
三枚目のお札→砂山ができる
となっています。
最後のおしょうさんも一休さんのようなとんちで山姥を倒してしまうので、
すっきりした読了感があります。
■読んだ子どもの姿■
怖いやつに襲われて逃げるというハラハラする内容のため、
子ども達も固唾を飲んで本に集中してくれます。
子ども達を安心させたり、不安にさせたりの繰り返しがあり、
飽きさせません。
夜になってしまったけど、優しいおばあさんがいた→山姥だった。
お札に助けてもらった→山姥はすごい方法で乗り越えて追いかけてきた!
と安心と不安の繰り返しに子ども達は小僧さんに感情移入して見入ることでしょう。
読み手の大人が山姥のセリフを恐ろしそうに読めば、
さらに子ども達は絵本に夢中になってくれますよ。
昔話の中で結末が上手くできている作品ですのでぜひ。
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